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第45回独立行政法人評価制度委員会 議事録

日時

令和6年2月15日(木)16:00〜17:05

場所

中央合同庁舎2号館8階 第1特別会議室(ウェブ会議併用)

出席者

(委員)澤田道驤マ員長、原田久委員長代理兼評価部会長、長村彌角会計基準等部会長、天野玲子委員、金岡克己委員、栗原美津枝委員、島本幸治委員、高橋真木子委員、野ア邦夫委員、浜野京委員、河合晃一専門委員、清水剛専門委員、横田響子専門委員
(事務局)松本行政管理局長、谷口管理官ほか

議事

  1.  令和6年度から中期目標期間が始まる法人の新たな目標案について(諮問案件)
  2.  法人の取組事例
  3.  事業報告書の更なる充実に向けた対応

配布資料

議事録

【澤田委員長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第45回独立行政法人評価制度委員会を開会いたします。
 本日の会議は、傍聴者には会議の模様をオンラインで中継しております。
 この委員会に入ります前に、先日行われた「独立行政法人シンポジウム」に関して一言述べたいと思います。まず、御準備いただきました事務局の方、本当にお疲れさまでした。当日は、3つの法人の代表の方がお話をされ、パネルディスカッションに3名の委員が参加したのですが、まず、それぞれの法人でお話しされました代表の方、それから御準備いただきました方々、ありがとうございました。また、パネルディスカッションに参加いただきました原田評価部会長、栗原委員、清水専門委員、本当に御苦労さまでした。ありがとうございました。
 いろいろなアンケートの結果も返ってきており、また次も開催してほしいというお声をたくさん頂き、有意義なシンポジウムになったと思います。
 今回のシンポジウムでは、少し時間が短かったように思いました。もう少しパネルディスカッションの時間を取り議論を深めていくと、それぞれの法人の事例を参考にして、いろいろな法人の方々が、自分の法人にこういうものを取り入れたいということも出てきたかもしれないと思いますので、次のシンポジウムの開催を検討される際は、その辺の時間ももう少し長く取ってもいいのかなと思いました。ありがとうございました。
 それでは、委員会を開会したいと思います。
 本日は議題が3つございます。1つ目は「令和6年度から中期目標期間が始まる法人の新たな目標案について」、2つ目が「法人の取組事例」、3つ目が「事業報告書の更なる充実に向けた対応」でございます。
 まず、議題1「令和6年度から中期目標期間が始まる法人の新たな目標案について」でございます。
 本年度の見直し対象法人に係る目標案につきまして、各省から諮問がございましたので、審議を行いたいと思います。
 それでは、これまでの評価部会における審議の状況につきまして、原田評価部会長から御報告をお願いしたいと思います。
【原田評価部会長】  年明け1月25日に評価部会を開催いたしまして、これまで委員会で指摘をしてまいりました視点に立ち、その時点における目標案を点検したところでございます。
 目標案の概要及び評価部会の審議の状況につきましては、事務局より報告をよろしくお願いいたします。
【谷口管理官】    事務局より御説明いたします。
 本年度の見直し対象法人については、昨年11月の委員会において、次期目標の策定等に向けて、法人ごとに留意いただきたい事項を御決定いただいたところでございます。
 年明け1月25日に開催された評価部会におきましては、各主務大臣が作成した法人の新たな目標案の記載が、11月の委員会で御決定いただいた留意事項や業務・内部管理運営方針に対応しているかどうかを中心に御議論いただき、御議論いただいた内容については、事務局から主務省にお伝えさせていただいたところでございます。
 その結果、資料1−1に、留意事項と目標案の対応状況を整理してございますが、それぞれの法人の特性や現状を踏まえて、留意事項の趣旨を丁寧に、目標案に盛り込んでいただいたと考えております。資料1−2には、見直し対象法人の各目標案全文をまとめさせていただいております。
 なお、1月の評価部会で御審議いただいておりました、大学改革支援・学位授与機構につきましては、主務省における関係機関との調整が引き続いているため、今回の委員会に諮問はございませんでしたので、後日諮問がございましたら、改めて委員会に付議させていただければと存じます。
 今般、諮問のありました11法人の目標案の説明につきましては、資料の配付をもって、代えさせていただければと思います。
 それでは、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
【原田評価部会長】  ありがとうございました。
 ただいま事務局から報告がございましたけれども、評価部会において目標案を点検した結果、これまで委員会からお示しした留意事項については、おおむね対応していただいている旨を確認ができましたので、御報告をいたします。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言いただけますでしょうか。
 なお、毎度のお願いになりますけれども、日本学生支援機構の奨学金に関する不服審査会委員及び都市再生機構の契約監視委員会委員を務められ、また、国立高等専門学校機構の会計監査に携わられている長村委員におかれましては、申合せにより、当該法人に関する意見を控えていただくこととされておりますので、よろしくお願いいたします。
 清水専門委員、どうぞ。
【清水専門委員】  ありがとうございます。
 前回の内容から、一部の法人において、主務省の役割を果たすため、しっかり法人をフォローアップしてほしいというような内容もさらに書き加えていただきました。評価部会でもお話がありましたが、法人だけではなく、主務省においてもしっかり役割を果たしていただくという関係性が重要で、そこを整理していただければと思っていたところ、まとめて書き加えていただいたと思います。今後、改善状況をきちんとフォローできるようにすれば、より良い形でPDCAサイクルが回ると思いますので、その点、御礼申し上げます。
 以上です。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 本当にその辺りも踏まえて、きちんと書いていただいているのではないかと思っております。
 事務局から何かございますか。
【谷口管理官】  コメントありがとうございます。
 主務省の役割はますます大事になってきますので、そういった観点から御意見いただいたことは貴重なものだったと思います。
 また、清水専門委員御指摘のとおり、来年度以降の改善状況や取組も委員会としてしっかり見ていきたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
【澤田委員長】  ありがとうございます。大体よろしいでしょうか。
 それでは、各法人の目標につきまして、当委員会として「意見なし」とさせていただくことで御異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【澤田委員長】  ありがとうございます。それでは、本件につきましては「意見なし」とし、その旨、各主務大臣に答申いたします。答申の手続につきましては、事務局に一任させていただきます。
 私からも一言申し上げたいと思います。今年度の見直し対象法人の審議も、各委員や主務省・法人において、見直し対象法人に関するヒアリングから見込評価や新目標案の点検まで、丁寧に御対応いただきました。その結果、時代のニーズに的確に対応した中期目標になったと感じております。目標の策定に向けては、既に主務省と法人の間で意見交換を重ねていただいたと思いますが、こうして作られた目標につきまして、各法人のトップマネジメントの方々はもちろん、政策実施の最前線に立つ職員の方々におかれましても、目標に記載の趣旨をよく御理解いただくことを期待しております。
 こうした委員会の調査審議に積極的に取り組んでいただいた委員各位に感謝申し上げます。ありがとうございます。また、委員会の活動には、主務省や法人の皆様の御協力が不可欠であると強く感じておりまして、この場をお借りいたしまして、感謝を申し上げるとともに、引き続きの御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、次に議題2「法人の取組事例」について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
【渡邉企画官】  冒頭、澤田委員長からお話しいただきましたけれども、取組事例の紹介に先立ちまして、先月29日に開催いたしました「独立行政法人シンポジウム」につきまして、簡単に御報告をさせていただきます。
 シンポジウムでは、まず、澤田委員長に「独立行政法人のマネジメントに期待すること」というテーマで基調講演いただきました。その後、原田評価部会長、栗原委員、清水専門委員にも御登壇いただきまして、「法人の使命を果たすための人材の確保・育成の取組」をテーマに、森林研究・整備機構の浅野理事長、製品評価技術基盤機構の長谷川理事長、住宅金融支援機構の川埜理事から御紹介いただいた取組事例を基に、御議論いただいたところです。
 当日は、約80名の方に御来場いただくとともに、ウェブ同時配信でも約300名の方に御視聴いただきました。
 シンポジウム終了後に実施したアンケートでは、基調講演、パネルディスカッションともに、約8割の方から「とても満足」、または「満足した」との御回答を頂くとともに、9割以上の方から、またシンポジウムが開催される場合には参加したいという御回答を頂き、おおむね好評であったと認識しております。
 また、感想といたしまして、この委員会が法人をエンカレッジする役割を担っている、法人がうまく機能するよう支援しているということが理解できた、また、3法人のトップから直接、先進的な取組事例について、個人の思いやストーリーを含めて、具体的な話を聞くことができ、大変有意義であった、わくわくしたというようなコメントも頂きました。
 このたび御登壇いただきました委員方、また、3法人のトップの皆様方、当日、御来場いただきました皆様、御視聴いただきました皆様には心より厚く御礼申し上げます。
 また、次回以降の開催の在り方などにつきましては、これから検討してまいりたいと考えておりますので、引き続き御助言等を賜れますと幸いでございます。
 なお、当日の映像のアーカイブにつきましては、総務省YouTubeチャンネルに掲載いたしましたので、ぜひ、後ほど御覧いただければと存じます。また、シンポジウムの概要につきましても、今後、総務省の広報誌、また総務省のホームページにおいて紹介させていただく予定でございます。
 それでは、取組事例の説明に移らせていただきます。
 シンポジウムでも御指摘がございましたけれども、一昨年4月に委員会で決定していただきました「独立行政法人評価制度の運用に関する基本的考え方」にもございますとおり、先進事例の共有を通じて、(1)法人が業務改善の参考にできるように、また、(2)取組に関わった職員のモチベーションの向上にも資するように、積極的に情報収集して、委員会の場で御紹介できればと考えております。
 今回は情報発信に関する事例について御説明をさせていただきます。
 昨年4月に一部改定していただきました「独立行政法人の業務管理及び内部管理について」におきまして、「より幅広い層からの理解を得られるよう、法人の取組について、関係機関だけでなく、国民にとってわかりやすい情報発信となるよう促す」とされたことを踏まえまして、当該テーマについて取り上げるものでございます。
 今回御紹介いたしますのは、酒類総合研究所(酒類総研)と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の取組でございます。
 酒類総研は、広島に本部を構え、常勤職員40名程度の小規模な法人ではございますが、研究成果として科学的に明らかとなった日本産酒類の魅力について、関係機関と連携しながら積極的に情報発信に取り組まれている法人でございます。
 農研機構は、つくばに本部を構え、常勤職員3,000名超の大規模法人でございます。これまで数次にわたり、複数の法人が統合してできた法人でございますが、理事長の強力なトップマネジメントにより、統一的かつ効果的な研究成果の発信をされている法人でございます。
 では、酒類総研から具体的に御紹介をさせていただきます。
 平成25年以降、政府方針において、日本産酒類の輸出促進の方針が出されたところです。輸出促進にあたっては、まずは海外の方に日本産酒類について正しく知っていただくことが重要ということで、酒類総研が貢献していくこととなりました。
 従前の体制といたしましては、研究員の方が広報も兼ねていたということでございますが、平成28年度からは、広報を前面に出した部門をつくり、また、兼任されている方に加えて広報専担の職員を配置したということでございます。
 さらに令和3年度以降、従前作成していた冊子類だけでなく、動画の制作など、新たな取組に挑むということで、理事をトップとする5名のプロジェクトチームを創設して、広報機能の強化を図っていったということでございます。
 具体的なコンテンツといたしまして、1つ目は、「お酒のはなし」という冊子がございます。歴史、作り方、また科学的観点からの特徴の御説明、楽しみ方などが載っております。焼酎や日本酒に加えて、ワインやビール、ウイスキーなど、多岐にわたるものが出されております。
 また、次の「日本酒ラベルの用語事典」は、インバウンド向けに作られたもので、非常に多言語に翻訳されているものでございます。
 上から4つ目の「Sake Terms」、「Shochu Terms」につきましては、輸出・販売事業者の要望を基に、専門用語集として作成されたものでございます。
 さらに、冊子類の最後にございます「日本酒保管ガイド」につきましては、日本酒の輸出は伸びているものの、海外の販売店などで適切な保管がされていないという課題があったことから、お酒の瓶の色と日本酒の劣化に関する酒類総研の研究成果などを基に、主に流通業者向けに日本酒の保管ガイドを作成したということでございます。
 このほか、動画といたしまして、日本酒の歴史や酒類総研の役割、また、適切な取扱い方法や保管方法、研究成果として、料理とのペアリング等を紹介した動画がYouTubeに掲載されておりまして、在外公館のイベントや広島サミットで上映されたということでございます。
 こうしたコンテンツの作成の背景には、日本産酒類の製造に精通したネイティブスピーカーによるサポートなどによって、海外の方になじみやすいように、説明の仕方やレイアウトなどを工夫されているということでございます。
 また、発信にあたりまして、メディアへの積極的な売り込みを行っているということでございます。
 例えば、「SAKE TIMES」というウェブメディアにおいて、「日本酒ラベルの用語事典」が掲載された際には、その月の用語事典の依頼数が、それまでの月平均の約7倍以上に増加したということで、情報の拡散が図られているということでございます。
 このほか、国税庁等関係省庁が主催している各種会議、また、日本産酒類の関連のイベントを通じて、冊子類の配布や動画の上映をしているということで、こうした取組を通じて、国内の酒類製造業者、卸売業者、小売業者やインバウンドを含む消費者向けに情報が発信されているということでございます。また、在外公館や日本貿易振興機構(JETRO)の協力も得て、積極的に情報発信を行っているということでございました。
 一方で、課題もあるということでございます。いろいろな魅力的なコンテンツは用意されていますが、消費者のニーズの把握、また効果測定につきましてはこれからということでございまして、今後、必要な方に必要な情報が行き届くように、冒頭に御紹介いたしましたプロジェクトチームを中心に、戦略的に取り組まれていくということでございます。
 以上、簡単ではございますが、小規模法人ながら、研究成果を生かした魅力的な情報発信をされている酒類総研を御紹介させていただきました。
 続きまして、農研機構につきまして、御紹介させていただきます。
 農研機構は、平成30年4月に、民間企業出身の久間理事長という方が御就任されてから、急速に広報活動の強化が図られております。
 主な改革内容といたしましては、トップからの情報発信、そして理事長への取材依頼は全て受けること、また、専任の広報担当者を本部に集約した組織再編、司令塔機能の強化、刊行物の見直しなどを通じた統一的な農研機構のブランドの発信が挙げられます。
 1つ目のトップ広報につきましては、例えば、中長期計画など重要なトピックについて、理事長自らが積極的に記者会見をして御説明されているということでございます。また、取材の依頼は全て受けるという中で、必ず農研機構という名前を出して、農研機構の研究成果についてPRをしているということでございました。さらに、情報発信にあたっては、農研機構の本部がございますつくば市のみならず、農林水産省の記者クラブ、東京の記者会を通じて、全国に幅広く周知したいという狙いから情報発信をされているということでございました。あわせて、理事長自らが記者会見をすることによって、インパクトのある多数の報道につながっているということでございます。
 2つ目は、組織再編です。これまで各研究所において広報部署があって、それぞれで取り組まれていたということで、予算についても広報にそれぞれがどれくらい使っているかという部分は不透明であったと伺っております。そこで、農研機構本部において、各研究所の研究内容に精通した担当者を集めて広報部を創設して、農研機構全体を見渡せる広報体制を確立したということでございます。さらに予算も一元管理をしているということでございます。あわせて、各ブロックの拠点でございます全国に5か所ある地域農業研究センターにも広報チームを配置して、地域向けの広報やニーズ把握を行っているということでございました。
 3つ目、農研機構ブランドの確立に向けた取組ということで、まずホームページをリニューアルし、一般、生産者、企業、研究者・学生ごとのポータルサイトを設置したということでございます。また、刊行物の見直しなどを通じて、農研機構という名前を前面に押し出し、統一されたデザインやフォーマット等によって、法人の知名度の向上を図っているということでございます。こうした理事長によるトップマネジメントにあたっては、職員に対する日頃のマネジメントも重要視しているということでございまして、毎年度の「理事長の組織目標」の中で、広報関係の具体的な数値目標について設定されているということです。
 例えば、令和5年度の組織目標の中では、農研機構の発信機能の更なる強化ということで、新聞等記事掲載数を令和4年度比20%増、SNSインプレッション数(閲覧数)を前年度比20%増というような目標が設定されております。また、この目標に則して、各研究所においても、それぞれの目標が設定されているようでございます。
 さらに理事長は、様々な場面で広報の重要性について繰り返し言及しているということで、これまでは研究で忙しいから取材は受けないというマインドがあったようですが、このようなマインドからの脱却を図っているということでございます。
 また、広報部と理事長や理事との打合せも毎週1回行われているようでして、理事長から毎回、具体的な指示等が下りているということで、非常に積極的にコミットされているということでございました。
 こうした取組によって、組織体制や職員の意識が変わり、戦略的な広報につながっているという事例が次のページでございます。
 1つ目が、スペシャリストのサポートによる研究成果の売り込みでございます。例えば、農研機構は牛の体から発生するメタンの測定や、排出抑制技術の分野で世界をリードする研究を行っているところでございますけれども、農研機構では、メディア業界と豊富な人脈を持つ民間企業出身の広報マンを令和2年度から非常勤顧問として採用したということでございます。この方は、ほかの研究機関でも広報実績を上げられているということで、豊富な人脈を持つことから、まずメディアに売り込むための動画を、この方が中心となって作成していったとともに、売り込みにあたっても、この人脈を駆使した売り込みを行ったということでございます。また、タイミングといたしましても、国際会議の開催時など、環境問題が国民的話題になるタイミングでメディアへの売り込みを行ったということでございます。
 さらに、研究成果だけではなく、研究で中心的な役割を果たした2名の研究者をPRすることにも配慮したということでございました。その結果、NHKといった大手メディアを中心に、報道が連鎖的に続いたことに加えて、農研機構とともに、2人の研究者の知名度も向上することで、外部資金の獲得などにも寄与したということでございます。
 2つ目の事例が農作物の病気についてですが、かびによってサツマイモのつるや葉、そしてサツマイモ自体も腐っていくサツマイモ基腐病というものが平成30年に国内で初めて確認されて以降、南九州で甚大な被害が発生したということでございました。農研機構では、緊急支援プロジェクトチームを結成して、甚大な被害が出ていた南九州に研究者を派遣して、対策技術の普及活動を行ったということでございますけれども、広報部においても、この動きに連動して、YouTubeで対策技術紹介動画をアップするとともに、SNSや広報誌など、あらゆる広報ツールを活用して、生産者に向けて対策技術について集中的に発信を行ったということでございます。この結果、南九州以外への大規模な被害は回避したということでございまして、また、南九州においても被害が大幅に減少したということでございました。
 こうした取組の背景には、報道状況を分析するツールを活用されているということでございます。例えば、1つ目は、SNSデータ解析ツールで、無料のX(旧Twitter)やフェイスブックなどの各社が提供している解析ツールを活用しているということです。2つ目は、有料のPR効果測定ツールで、首都圏のテレビ放映や全国紙などの報道状況を自動集計するサービスだそうです。3つ目が、農研機構による独自開発ツールで、無料のYouTubeが提供する開発ツールにエクセルのツールを組み合わせて作ったもので、農研機構の職員が10日ほどかけて作ったと伺っております。こうしたツールの活用により、動画の視聴回数や、視聴者がどのデバイスで視聴したか、また、どのルートでその動画にたどり着いたかというような情報が解析できるようでございます。こうした取組の結果、メディアでの報道件数は増加傾向にあるとともに、SNSの視聴数なども増加しているということでございます。
 平成31年に、委員会に久間理事長にお越しいただいて、改革内容についてお話しいただいたところですが、広報についても、「これから強化していきます」、「こんな改革に取り組んでいます」という、まさに広報部を中心に戦略的に取り組んでいくと説明があったところ、それが機能した5年間であったということで、農研機構の役員の方が評価されておりました。
 一方で、新たな課題もございまして、いろいろな魅力的な動画が発信されているところですが、映像の専門技術を持った人材が非常に限られているということで、特定の方に業務が集中する傾向にあるということです。そのため、動画通信技術の高い6名のチームを創設し、このチームを中心に、全職員向けに農研機構のイントラネットに動画関連のニュースレターを毎月配信し、動画作成のコツなどを紹介しているということでございました。
 また、広報担当者向けには、外部講師による実務研修のほか、例えば、このページの右端にございます、みかんの栽培動画が、農研機構YouTubeきってのヒットコンテンツとのことですが、こうした閲覧数が多い動画を作成した研究者が、自ら講師となり、使用した機材や制作ノウハウも含めたスキルの共有を図っているということでございました。
 最後に、今後は国際的な認知度の向上にも注力していきたいと伺っております。そのためのツールといたしまして、食と健康に関するシンポジウムを定期的に開催して、海外の研究機関や企業を巻き込み、農研機構がイニシアティブを発揮できるようPRしていくということでした。また、農研機構の英語版サイトの充実を図っていく方向であると伺っております。
 以上、農研機構における取組の御紹介をさせていただきました。シンポジウムでも、3法人の取組事例について、それぞれの法人のトップからお話しいただいたところでございますけれども、それを受けて、登壇法人の取組について、もっと具体的に学びたい、自分の法人でも取り入れてみたいので担当者を紹介してくれないかなどの問合せがございまして、非常に反響の大きさを感じているところでございます。委員会の場を通じた取組事例の共有も含めまして、法人全体を盛り上げて応援していけたらと考えております。
 以上でございます。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 今回の法人の取組事例では、情報発信における見せる化の事例2つを紹介していただきました。ただいまの御報告につきまして、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。
 河合専門委員、どうぞ。
【河合専門委員】  御説明ありがとうございました。
 法人ごとに広報に割けるマンパワーや情報発信のターゲットが異なってくると思いますので、法人それぞれの状況に合わせた広報体制や発信方法を考える必要性があると思います。
 その意味で、本日御紹介いただいた事例のように、組織規模の異なる事例の紹介は非常に重要だと思っております。例えば、酒類総研の取組である関係機関との連携について、特に主務省の異なるほかの法人との連携については非常に高く評価できるのではないかと思っております。
 個々の法人単独では、情報発信の上で限界がある部分もあるかと思いますので、主務省はもちろん、そのほかの機関と連携しながら、情報発信に努めていただくということが、重要なインプリケーションではないかと思いました。
【澤田委員長】  ありがとうございます。ほかの機関とうまく連携していきながら、周りを巻き込んで進めていくということは非常に重要かと思います。
 島本委員、どうぞ。
【島本委員】  御説明ありがとうございます。感想と1つ質問を申し上げます。民間企業でも、株主だけではなく、幅広いPRやCSRも含めて、重要なブランディング戦略を行っている中で、2つの取組が非常に時流に合っているなと感じました。
 特に、両事例ともウェブマーケティングにもコメントされておりまして、先ほど広報の成果をしっかり計測するのが課題とありましたが、ウェブであれば成果も出やすいと考えられるため、そういった成果が出ることを期待できると思っています。
 広報にこれだけ力を入れているということで、ツールだけではなく、広報するコンテンツにどういう変化があるかという点についてお尋ねいたします。最近、民間企業では、社会的課題への対応、例えば、ESGやサステナビリティにどう貢献しているかということが、大事なアピールポイントになってきているため、そのような配慮や戦略があるかどうか、教えていただければと思います。
【澤田委員長】  ありがとうございます。
 事務局いかがでしょうか。
【渡邉企画官】  御指摘ありがとうございます。
 例えば、酒類総研では、今、国税庁が力を入れている地理的表示保護制度(GI制度)の説明も含めて、資料に挙げさせていただいた冊子類の中でPRされているとともに、輸出促進にあたり、日本産酒類の適切な取扱いについて不明瞭だという課題が見えてきたということで、法人が科学的な根拠をもち、様々な雑誌の中で魅力とともに発信していくことで、消費や輸出促進につながるようにということで寄与されているのではないかと考えております。
 農研機構につきましては、そもそもターゲットが非常に幅広い中で、例えば、先ほど御紹介いたしました法人のホームページでは、一般向け、生産者向け、企業向け、研究者・学生向け、それぞれ4つの対象ごとのポータルサイトが設置されており、それらのニーズに応えるような情報を発信しているのかなと思います。
 例えば、一般の方向けですと、農研機構の知名度向上を目的に、様々な情報発信をされているとともに、農研機構施設のオンラインでの一般公開などもなさっていて、研究成果の披露などをされているようでございます。
 また、YouTubeでは、最年少野菜ソムリエプロの資格を取得した緒方湊さんという方を起用し、広報アンバサダーに任命して、若者向けの情報発信にも力を入れているようでございます。
 また、生産者・企業向けについても、「農研機構技報」という技術情報誌を刊行しており、農研機構が開発した研究成果、スマート農業や品種開発などを、産業界や農業界、大学、行政、マスコミ等に発信しているようでございまして、先ほど言及いたしましたサツマイモ基腐病が発生した際にも、農研機構の刊行物について、JAなどを通じて発信されているようなのですが、そうした関係機関を通じて、即時に適切な情報が届けられるよう工夫をされているということでございました。
 また、研究者や学生向けに対しても、国内の学会の役員を農研機構が務められているようで、学会やシンポジウム、講習会などを通じて、技術情報の積極的な発信に努めているようでございます。
 このように、幅広い意味での社会課題への戦略については、なかなか説明に苦慮するところではございますが、それぞれのターゲットに対して、その時々で必要な情報が発信できるように御努力はされているのではないかと考えております。
 以上です。
【島本委員】  ありがとうございます。
【澤田委員長】  栗原委員、どうぞ。
【栗原委員】  2つの法人の事例をお聞きいたしまして、それぞれ非常に示唆に富む取組だと思いました。
 酒類総研については、河合専門委員からのコメントと同じように、ほかの機関とどう連携するかというところについて参考になりましたし、非常に良い連携をされているということも聞いておりますので、ぜひ、そういうことを発信していただき、また、ほかの法人にも参考になるような形になればよいと思います。
 農研機構については、広報に非常に力を入れていらっしゃるということは分かったのですが、こうした組織で40人広報部にリソースを割くということは、民間企業も含め、本来並大抵のことではないと思います。そのため、広報部に40人割くことができた理由、それから、こうした体制を構築したことによる効果を、発信することも重要だと思います。一般の方に対しての周知という意味と、法人の職員に対して、また、農業等に携わる方々に対しても取組による効果をより周知することが有効ではないかと思います。また、今回の事例紹介だけではなく、法人が作成し公表する事業報告書などに、この取組により、組織の価値がどのように上がったかという観点でお示しいただけると、より説得力が増すのではないかと思います。
【澤田委員長】  事務局から、いかがでしょうか。
【渡邉企画官】  ありがとうございます。ただいまのお話につきましては、農研機構にもお伝えさせていただければと思っております。
 平成31年2月の久間理事長のお話を振り返りますと、まずは司令塔機能をつくり、農研機構の知名度を上げていき、知名度が上がれば、ひいては職員のモチベーションの向上にもつながるため、そのように進めていきたいというお話がありました。
 農研機構はいろいろな法人が統合してできている法人のため、非常に多岐にわたる研究が行われており、久間理事長が就任されるまでは、司令塔機能がなかったということでして、今、これだけ統一的にできているというのは、理事長による強力なトップマネジメントの成果が出ているのかなと感じております。
 広報部につきましても、各研究所、各研究分野において精通した方々が集められているということでございまして、単に刊行物の発行などをされているだけではなく、各種イベント、戦略的プロジェクトの企画などを行っております。例えば、今年度は創立130周年のところ、130周年プロジェクトや、種々の国際シンポジウムの企画運営もされており、また、先ほど申し上げた施設の一般公開や、技術交流を促すための展示会などのイベントの企画運営、また、年間30件以上の要人視察の対応や、年間3,000件以上の問合せ対応を行っており、かなり人を割かなければいけないとのことです。また、先ほど申し上げた非常勤顧問の方を含めた報道チームもあり、プレスリリース年間150件、取材対応も年間800件ほどあるということでございます。
 さらに、ホームページを制作しているウェブチームや、農研機構は「食と農の科学館」も運営していらっしゃるため、広報部において、その科学館の運営もなさっており、年間1,100件以上の見学対応もなさっているということでございます。
 このほか、魅力的な数々のYouTubeの動画制作やSNSの発信など、農研機構内のオンライン通信のサポートなどもやっているということで、40人体制で非常に多岐にわたる業務をやっているということですので、決して人数が多過ぎるということはないのかなと感じておりますが、先ほど御発言のあった、取組による効果、また組織の価値がどのように上がったかといった点につきましては、今後農研機構のお話をお伺いできればと思っております。どうもありがとうございました。
【澤田委員長】  ありがとうございます。
 天野委員、どうぞ。
【天野委員】  ありがとうございます。今回のように、うまくいっている事例を紹介するということは非常に良い取組だと感じています。
 国立研究開発法人につきましては、本来、国費によって実施される研究について、しっかりと研究開発成果をつくっていただき、それを社会実装するということが非常に重要です。久間理事長は、国立研究開発法人で、まずしっかりした研究開発成果をつくるとおっしゃられていると思います。
 農研機構は農業の無人化施工など、多岐にわたる成果を立派にお出しになり、次の段階として、この成果を実際に周知するという段階になっているのだと思います。また、久間理事長のかつてのお話を振り返ると、社会実装するということは、国民生活に役立てるために成果を実装するということだと思います。
 さらに次の段階は海外展開だと思います。研究開発成果をしっかりと海外にもPRし、社会実装し、最終的には、1つの在り方だとは思いますが、国民のために外貨を稼ぐツールに育てていくという途中段階の広報だと思います。これは農研機構だけが、どういった段階における広報なのかについて説明されるだけではなく、本来は、委員会の中で、国立研究開発法人の位置づけや、研究開発成果をしっかりと社会実装する上での広報の段階として、こういう成果が上がっているということを発信されるのが良いのではないかと感じました。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 見せる化というのは、見せて終わりではなく、その結果、社会実装に向けて、世の中にどのように役に立つのかというところにつなげてこそ、見せる化の意味があると思います。
 その点は理解された上で事例の紹介を行っていることかと思いますが、国立研究開発法人そのものも含めて、いろいろな見せ方はあると思いますし、さらに見せ方について検討していただければと思います。
横田専門委員、どうぞ。
【横田専門委員】  ありがとうございます。
 両事例とも非常に興味深く拝見いたしました。広報を強化していく中で、まず組織体制をどこまでつくるのか、予算をどのように効率よく集めて使っていくのかというところが重要であるということを再認識いたしました。
 農研機構は、ほかの委員方もおっしゃっていますが、外部資金の獲得やサツマイモ基腐病の封じ込めに役立てたという成果について、かなりインパクトのあることだと思いますので、どれぐらいの成果だったのかということは、数値化もできるのではないかと思いました。
 また、YouTubeチャンネルを拝見したところ、カテゴリーとタイトルづけが非常に工夫されていると感じました。動画1つ1つ作るのをこだわられているだけではなく、1つヒットしたときに、ほかの動画を見てもらうための工夫もなされていて、ほかの法人においても参考になると思いました。
 酒類総研は小規模組織ということで、外部連携をうまく進めていくということも非常に重要ですけれども、今回の広報を強化していくにあたって、予算も組んだとお伺いしております。どれぐらいの予算があれば、まず走り出しが可能なのかという点について、もし、お分かりになれば、教えていただければと思います。
 以上です。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 事務局からお願いします。
【渡邉企画官】  御指摘ありがとうございます。
 農研機構につきまして、まずYouTubeのカテゴライズの件は、まさに独自で開発された解析ツールの成果だと伺っております。見ている動画に、どのような道筋でたどり着いたかということを確認すると、約8割の方がYouTubeサイトから、その動画にアクセスしたということが分かったため、農研機構を初めて知った人に見てもらいたい動画カテゴリーであるとか、スマート農業の動画カテゴリー、品種開発の動画カテゴリー等、動画リストのカテゴリーを分かりやすく工夫されているということでございました。こうした取組による成果については数字で見えるといいなという部分はございますけれども、地道に取組をなさっているということでございます。
 酒類総研につきましては、令和2年に政府方針が出されて、輸出促進の重点項目に日本酒、ウイスキー、焼酎・泡盛の3品目が重点品目とされたことを受けて、国税庁にも輸出促進室が発足したことを受け、酒類総研にも、それに伴い予算が組まれ、プロジェクトチームの発足に至ったと伺っております。
 実際に、どれぐらいの予算が組まれたのかと申しますと、運営費交付金の当初予算で国内外への情報発信の強化や、ブランド価値向上に資する研究も含めた予算が令和3年度で10.4億円ついたと伺っておりまして、翌年度の令和4年度の予算でも10.1億円台、大体10億円前後でついているのかなと思っております。広報そのものに、どれだけのコストがかかったかという点は、すぐに申し上げられず、総額でいうと、それぐらいだと伺っております。
【横田専門委員】  ありがとうございます。
【澤田委員長】  最後に浜野委員、お願いします。そのあと次の議題に移りたいと思います。
【浜野委員】 御説明丁寧にしていただきまして、ありがとうございました。
 規模が全く違う、しかしながら輸出の拡大というような大命題を持つ組織としての広報をどのように進めていくかという好事例を御紹介いただいたと思います。
 酒類総研は、国税庁と一緒に、いろいろな補助金も進めておられて、規模が小さいですけれども、非常にうまく連携をしながらやっておられるなという点が評価できると思います。
 農研機構は、理事長が非常にリーダーシップを発揮されていて、食料安全保障、輸出の拡大や生産性向上といった目標をはっきりと理事長御自身が打ち出して、分かりやすく発表されているということです。先ほど来、出ていますけれども、YouTubeも非常に分かりやすく、いろいろなステークホルダーには届いていると思いますが、広報全体として、どのくらいの成果が上がっていくのか、次のステージにおいてどのようにやっていくのかといったところが、途上かもしれませんが、まだ分かりにくいと思いますので、その辺を次に聞いてみたいなと思いました。
また、農研機構の理事長、副理事長の任期が令和7年度末までということで、こうした取組が法人内で継承されるといいなと思いますので、主務省と法人においては、その点において頑張っていただきたいと思いました。
 以上です。
【澤田委員長】  貴重な御意見ありがとうございました。こうした取組は、トップが替わっても継続できるような、そういう仕組みをつくっていくということが重要かと思いますので、現理事長がいる間に、そういった仕組みを整備していただければと思います。
 皆様、まだ御発言あろうかと思いますけれども、だいたいこれぐらいにして、次の議題に行きたいと思います。
 次に、議題3「事業報告書の更なる充実に向けた対応について」でございます。
 長村会計基準等部会長から御報告をお願いしたいと思います。
【長村会計基準等部会長】  先ほどの好事例に関して、一言だけ意見を述べさせていただきますと、いずれの事例も大変創意工夫を凝らしまして、広報戦略を中心に置いていただいたということだと思います。とても良い取組だと思っております。
 会計基準等部会におきましては、独立行政法人通則法第38条第2項の法定書類でございます、独立行政法人の事業報告書の更なる充実、そして一層の活用を目指す、こういうことを考えまして、令和4年11月以降、令和3年度の事業報告書の分析や事業報告書の利用者へのアンケートを実施してまいりました。その結果を踏まえまして、令和5年12月に対応策をとりまとめ、「標準的な様式」や「標準的な記載例」を改訂するとともに、事業報告書作成にあたっての留意点を周知し、今年度からの適用に向けて、各法人は準備中かと思っております。
 事業報告書のガイドラインは、恐らく、非営利組織における非財務情報の開示ガイドラインとしては、現在、国内では唯一のものではないかと思っておりまして、他の非営利組織の方が見ていらっしゃるケースもございます。
 今回の様式改訂によって、各法人の作成する事業報告書にガイドラインの考え方が十分に反映され、そして、より充実した財務報告となることを期待してございます。
 検討結果及び「標準的な様式」等の改訂内容につきましては、事務局より御説明をお願いいたします。
【佐藤管理官】  独立行政法人制度の担当をしております管理官の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料3に沿って御説明申し上げます。独立行政法人会計基準等につきましては、今ここにいらっしゃる長村会計基準等部会長、野ア委員はじめとした会計基準等部会の委員の先生方に加えまして、財務省の財政制度等審議会の法制・公会計部会の委員の先生方で構成されます共同ワーキングチームがございまして、そちらで精力的に、これまでも御議論いただいてまいりました。この事業報告書についても、先ほど長村委員から御案内いただきましたとおり、更なる充実に向けて御議論いただいてきておりました。
 平成30年にガイドラインを設けて以降は、優良事例の紹介などでフォローアップしてまいりましたけれども、令和4年度においては、作成状況の分析や利用者へのアンケートを行いまして、それを基に御議論いただいて、様式等の改訂に至ったということでございます。
 作成状況の分析というのは、参考資料1でお示ししているとおりでございまして、また、利用者へのアンケートは参考資料2でございますけれども、ここでの説明は割愛させていただきます。
 資料3の2枚目の下段以降でございますけれども、分析やアンケート結果を踏まえて御議論いただきまして、確認された事項を左に書いてございます。主なものを5点挙げてございまして、それに対する対応は右に書いているとおりでございます。
1点目の多様な情報ニーズにつきまして、アンケート結果では、社会課題への取組状況等の新たな情報のニーズが生じているということが見てとれました。また、利用者の属性によってニーズが異なるということも確認されたところでございます。
 利用者の属性につきまして、アンケートでお尋ねした対象の方は、金融機関、公認会計士、主務省、独法では監事、それから広報等の担当者、研修等の担当者となっており、そうした属性によって回答の傾向が異なっていたということでございます。
 対応といたしまして、想定される利用者のニーズを念頭に事業報告書を作成することが肝要であり、特に法人が重視すべき利用者が存在する場合には、そういった利用者に向けた情報を充実させることが有用であるということを周知いたしました。
 今まで、利用者が事業報告書のどこをどのように見ているのかということは、特段まとめたものはございませんでしたが、アンケート結果については、既に主務省、法人には周知し、公開もしておりますので、そちらを見て、今後の事業報告書の作成の参考にしていただきたいということでございます。
 それから、次の点、広報における活用状況ということでございまして、実は広報の担当者が、事業報告書を見たことがないという回答もあり、さらに、ほかの回答者の属性に比べて多いという結果が出てございました。この結果から、広報の活動のツールとして十分に活用されていないことや、広報の担当者が事業報告書の作成に関与していないことがうかがえるのではないかということでございます。対応といたしまして、広報の担当者が作成の初期段階から主体的に関与し、作成及び活用の両面で協力することが重要であるということを周知させていただいたところでございます。
 3点目のサステナビリティ情報の記載につきまして、サステナビリティ情報に対する関心、ニーズは高いという結果が出てまいりまして、その内容を分析しますと、法人によって内容の差が大きいという状況でございます。社会におけるサステナビリティ情報に対するニーズの高まりというのはございますし、また、有価証券報告書でも、昨年からサステナビリティ情報の記載が求められているという状況も踏まえまして、標準的な事業報告書の記載例を改訂いたしまして、人的資本に関する方針や社会環境の持続可能性の確保・向上への貢献、そういったことを記載することを求める記載例にしたということでございます。それから、そういったサステナビリティとの関連の程度は法人によって異なるため、そうしたことも踏まえながら、積極的な情報開示を行う旨、周知をしたということでございます。
 続いて、業務運営上の課題・リスクにつきまして、アンケート結果では、これを充実してほしいという意見が多かったということでございます。一方で、その内容を見ますと、法人個別というよりは、一般的なリスクの記載にとどまっている法人も多く見られました。そのため、各法人の目的達成を阻害する法人固有の課題・リスク及び、その対応策について記載するよう求めることにいたしました。
 続いて、当期の活動実績・成果に関する情報につきまして、アンケート結果では、そういったものを充実してほしいという意見が多かったものの、様式・記載例では、当期の実績を記載させる明確な項目は存在しておりませんでしたので、そういった項目を今回新設するという対応をしたということでございます。
 次のページに、様式の改訂内容を整理しております。標準的な様式の項目で、赤字で線が引いてあるもの、7の(8)と10の(1)を新設しております。7の(8)は、法人の強みや基盤を維持・創出していくための源泉について、10の(1)は当事業年度の業務成果・実績を書くというものでございます。
 それから、標準的な記載例には、各項目で書く内容を記載しているのですが、そこに新たにこのような事項の記載を求めるということにしております。例えば、「7.(3)職員の状況」では、女性活躍推進法と育児介護休業法で公表が求められている女性管理職比率、男女の賃金の差異、男女別の育児休業取得率などの指標を記載するとしております。
 また、「7.(7)社会及び環境の配慮等の状況」について、SDGsについての取組等、社会環境の持続可能性の確保・向上への貢献についての方針等を書いてくださいという形にしてございます。
 それから、「実態を踏まえた例示」、「実態を踏まえた記載例」として、標準的な記載例に、こういったことも書き加えて結構ですというものをもともとお示ししているものがございまして、そこにはTCFDのフレームワークに沿った情報の記載が可能であることを例示するようにしております。
 以上でございます。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告につきまして、どなたでも結構でございますから、御発言お願いしたいと思います。
 野ア委員、どうぞ。
【野ア委員】  御説明ありがとうございました。私もワーキンググループで、議論に参加させていただいたので、コメントをさせていただきたいと思います。
 1点目は、アンケート結果には、各独法の広報担当者が関与してない、あるいは場合によっては知らないという回答があったところ、民間企業では、統合報告書であるという違いはありますが、統合報告書を広報が中心になって作成することが常識的であるように、広報担当者の役割は非常に大きいと思いますので、各独法においては、広報担当者にも主体的に関与して事業報告書を作成していただきたいと思っております。
 二点目は、サステナビリティに関して、今、世の中で意識せざるを得ないものですが、その捉え方としては、地球や人類という視点から、その組織の持続可能性という視点まで、非常に多様であるため、会計基準等部会では、どういう形で標準的な様式等に織り込むのが良いのか随分議論がありました。結果としては、「標準的な様式」の「7.持続的に適正なサービスを提供するための源泉」に、例えば、「(3)職員の状況」の項目にダイバーシティについて記載することや、「(7)社会及び環境への配慮等の状況」の項目に、SDGsについて記載し、また、「(8)法人の強みや基盤を維持・創出していくための源泉」も非常に重要な項目だと思いますが、法人が持続的にサービスを提供するための強みや基盤について開示していただくよう示されています。大小いろいろな法人があり、必ずしも統一的ではなく、どうすればいいのか分からないということがあるかと思いますが、この7全体がサステナビリティに関する項目であるという見方をしていただくと良いという形で「標準的な様式」を整理しまして、各法人が参考にできる形にうまくできあがったと思っております。
 以上、感想でございます。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 それぞれの法人が書きやすいような形でまとまっていると思うのですが、佐藤管理官いかがですか。
【佐藤管理官】  今、野ア委員から御発言いただいたとおり、会計基準等部会で御議論していただいて、まとめていただきました。
 各法人が書きやすいようにという点につきまして、今回の参考資料1に、このように書いている法人があるという参考事例をつけておりまして、こういったところを見ながら、各法人で考えていただくということができるのではないかと考えております。
【澤田委員長】  ありがとうございました。
 金岡委員、お願いします。
【金岡委員】  ありがとうございます。
 参考資料2のアンケート結果の中に、法人ごとに複数の報告書を作成しており、また、対外的な冊子やパンフレットも作っているということで、それらの関係について問う声、また、作成の負荷が大きいという意見が複数あると感じました。
 それについて2点気づいたところを申し上げますと、まず1点目は、国民への説明責任も必要な法人として、トレーサビリティを確保していく意味でいう正式な法人としての記録というのは何なのだろうというような議論がやや不足しているのかなと、アンケート結果を読んで思った次第です。
 例えば、民間の上場企業でいいますと、年次で出しているものとして重要なものは、株主総会の招集通知、有価証券報告書、アニュアルレポートや統合報告書といったものがセットになり、年度ごとのトレーサビリティが確保されているのではないかと思うのですが、独法の場合、複数の報告書の中で、どれがそういうものに該当するという理解になっているのか、ややその議論が不足していると感じました。
 2点目ですが、複数の報告書を作成することに対して負荷が大きいという御意見について、法人のデータの保管や管理の在り方においてDXの進展が遅いために、大きな負荷と感じられているのではないかと思いました。恐らく報告書等のデータは全てデジタルで作成していると思いますので、文章や図表を適切に管理し、それらが再利用できる状態にされていれば、新たな編集は必要ですが、必ずしもそれほど大きな負荷にはならないのではないかと感じました。
 以上です。
【澤田委員長】  ありがとうございます。重要なポイントかと思います。
 事務局からいかがでしょうか。
【佐藤管理官】  御指摘ありがとうございます。
 1点目、正式なものは何なのかという点につきまして、長村会計基準等部会長からも、冒頭、御案内いただきましたが、独立行政法人通則法第38条では、主務大臣に事業年度が終わった後3か月以内に財務諸表を出すということになっており、それに事業報告書を添付するという位置づけでございます。そういった意味では、事業報告書というのは、法定書類で作成しなければならないものという整理でございます。また、当然、財務諸表についても作成し提出しなければならないというものでございます。
 各法人、いろいろな書類を作成しなければならず大変だという御意見は常に言われるところでございますが、事業報告書は、法定書類や報告書など、いろいろな既存の書類のプラットフォームになるものだという位置づけで整理されております。各報告書では、詳細な情報を記述しますが、事業報告書では、それぞれの概要を記載し、その概要を一覧で見ることができるものであり、各報告書の詳細については、各報告書の電子ファイルのリンクを掲載していただくことを推奨しております。
 事業報告書は、そういった形で、詳細な情報はほかの報告書を見るという位置づけで整理されておりまして、そういった考え方について御理解いただけていない部分もあるのかと思いますので、しっかりコミュニケーションを取って進めていきたいと考えております。
 また、御指摘のように、事業報告書は情報を統合して概要版を作成しているというもので、そういった意味では、法人にあるデータは、もとは全て同じものであるため、効率的に作成できる仕組みにする必要はございますので、折に触れて、どういうやり方ができるのかということについて、コミュニケーションを取っていきたいと思います。
 今回の様式の改訂においては、ただ内容を充実させるだけではなく、例えば、中期計画に関する記載についてはその項目を列記するような記載例になっているために各法人による記載が形骸化していますので、今回、記載例を削除いたしました。このように、あまり活用されておらず、結局、様式や記載例を示しても意味がないようなところはやめていくといったことも大事かと考えております。
【澤田委員長】  ありがとうございます。金岡委員、よろしいでしょうか。
【金岡委員】  はい、ありがとうございました。法定の報告書ということで理解しました。
 ただ、報告を求められているものではなく、法人がサステナブルであるために、残していくべき年次の記録というのはあると思います。そのため、自主的に残していくべき年次の報告書は何かということで、今回、財務報告に添付する事業報告書を、統合報告書のような形で一つのガイドラインと定めていただいたのは大変意義のあることではないかと感じております。
 以上です。
【澤田委員長】  ありがとうございます。
 栗原委員、どうぞ。
【栗原委員】  ありがとうございます。
 まず1点目に、事業報告書が統合報告書のような形だとすると、既に企業等でも作っている統合報告書については、見られる、評価される、比較されるからこそ、統合報告書がブラッシュアップされていくという面があると思うので、独法において、そういった機会がないことが、お互いにより良くしていこうというインセンティブになっていかないように思います。そこで、委員会において、事業報告書を活用しながら議論するということがあると良いと思いました。
 2点目に、分かりやすい場所に、複数年度の過去の報告書も含めて開示していただくと良いのではないかと思いました。
 3点目に、各法人のガバナンスにあたり、監事が果たす役割はかなり大きいため、事業報告書の中で、監事がどういう活動をし、どのように機能しているのかについて、ぜひ記載していただきたいと思いました。
 以上です。
【澤田委員長】  ありがとうございます。
 最後の件は、民間企業の統合報告書の中でも、例えば、社外役員のヒアリングの結果を記載し、自分たちがどういう役割を果たしているかについて、かなり書いているため、そうしたことは重要かと思いました。また、栗原委員のご指摘のとおり、事業報告書を委員会としてうまく活用していくということも大切かと思いました。
 河合専門委員、お願いします。
【河合専門委員】  アンケート結果につきまして、どうしても気になった点がありまして、教えていただければと思います。
 参考資料2でございますが、2ページ目の問A、事業報告書を御覧になったことがありますかという質問に対して、主務省担当課の担当者109名のうち、7名が見たことがないと回答していらっしゃいます。また、次のページの問C、独立行政法人が公表する書類のうち御覧になった事のある書類があれば選択肢からお選びくださいという質問に対する回答を見ますと、主務省担当課の担当者のうち数%が、「特にない」を選ばれていらっしゃいます。この結果に関して、主務省の担当課の担当者がいずれの公表資料も見たことがないと回答しているケースが幾つかあったという理解で良いのかということと、そのような理解で良い場合、例えば、公表されていない、ほかの内部資料か何かで、主務省として法人の状況を把握されていらっしゃるという理解をしても良いのかという点に関して御意見をお伺いしたいと思います。
【澤田委員長】  ありがとうございます。
 では、事務局から、よろしくお願いします。
【佐藤管理官】  御指摘ありがとうございます。おおむねそのような理解で正しいと思いますが、担当者の中には、異動してきたばかりという人もいたかもしれませんし、実態としては、公表資料を見る以前に、いろいろな資料に触れていて、こういう形の資料は見たことがなかったという人はいるかもしれないと思います。それは良いことというわけではないと思いますけれども、そういう資料があるのは分かっているものの、全部は読んでいませんという人もいるだろうと思います。
【河合専門委員】  分かりました。ありがとうございます。
【澤田委員長】  いろいろな御意見ありがとうございました。
 今回の様式の改訂を踏まえて、各法人において、利用者にとって分かりやすい事業報告書を作成し、積極的な情報開示にぜひとも取り組んでいただきたいと思います。
 それでは、最後に事務局から報告事項があれば、お願いしたいと思います。
【谷口管理官】  次回の委員会につきましては、4月15日月曜日の14時から、年度初めの委員会の開催を予定しております。
 以上でございます。
【澤田委員長】  ありがとうございます。以上をもちまして、第45回独立行政法人評価制度委員会を閉会したいと思います。以降は、原田評価部会長に引き継ぎたいと思います。
 本日は、皆様、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございました。以上で終わります。

 
 (以上)

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