総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版 > G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合
第2部 情報通信分野の現状と課題
政策フォーカス G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合

政策フォーカス
G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合

1 G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の概要

2023年(令和5年)4月29日及び30日、総務省、デジタル庁、経済産業省が、群馬県高崎市において「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」を開催した。同会合は、同年5月19日から21日にかけて開催されたG7広島サミットの関係閣僚会合の一つであり、G7メンバーのほか、招待国及び関係国際機関が参加した。

図表1 G7首脳及び関係閣僚会合一覧

2 G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の結果

(1)これまでの議論の経緯

デジタル化の恩恵を世界全体が享受し、経済成長や雇用の創出につなげていくためには、国際的な政策連携が不可欠であり、我が国が議長国を務めた2016年(平成28年)4月のG7香川・高松情報通信大臣会合以降、G7及びG20の枠組みで、デジタル経済に関する議論が継続的に行われている。2019年(令和元年)6月にG20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合が開催されて以降も、新型コロナウイルス感染症の影響により社会が大きく変化する中で、デジタル化の推進はより一層重要な論点として議論され続けており、2022年(令和4年)5月には、G7デジタル大臣会合(ドイツ)が開催されるなど、デジタル化を社会経済の更なる発展につなげていくためにG7が協力して取り組むべき事項が議論されてきた。

(2)G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の結果概要

本年の会合では、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアのウクライナ侵略により世界経済が受けた深刻な影響からの力強い回復を目指し、権威主義国の動向や世界経済の変調等直面する危機を踏まえ、DFFT(信頼性のある自由なデータ流通)、デジタルインフラ、インターネット・ガバナンス、AI等のデジタル分野におけるG7の結束した対応を示すことを目指すとともに、「グローバルサウス」との連携も視野に、デジタル分野での取組を加速させることを目指し、松本総務大臣、河野デジタル担当大臣、西村経済産業大臣の共同議長の下、①「越境データ流通及び信頼性あるデータの自由な流通の促進」、②「安全で強靭なデジタルインフラ構築」、③「自由でオープンなインターネットの維持・推進」、④「経済社会のイノベーションと新興技術の推進」、⑤「責任あるAIとAIガバナンスの推進」、⑥「デジタル市場における競争政策」の6テーマに関して議論を行い、その成果として、5つの附属書を含む「G7群馬高崎デジタル・技術閣僚宣言」が採択された。これらの6つのテーマに関する閣僚宣言の主なポイントは以下のとおり。

①越境データ流通と信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の推進

DFFTの具体化のための国際枠組み(IAP)の設立及び「DFFTの具体化のためのG7ビジョン・プライオリティ」に合意。

②安全で強靱なデジタルインフラ構築

大容量・低遅延通信、エネルギー効率性、複層的ネットワーク、オープン性、相互運用性等の要素を具備する「Beyond 5G/6G時代における将来ネットワークのビジョン」を策定し、「安全で強靭なデジタルインフラの構築に向けたG7アクションプラン」に合意1

③自由でオープンなインターネットの維持・推進

「自由でオープンかつ、グローバルで分断がなく、信頼性があり相互運用可能なインターネットの維持・推進に向けたG7アクションプラン」に合意2

④経済社会のイノベーションと新興技術の推進

デジタルインフラの相互運用性の確保やデジタルサプライチェーンにおけるソフトウェアの脆弱性対策、革新的技術イノベーションに親和的なガバナンス手法の活用。メタバースに関する等のデジタル技術活用に係る将来的な議論。

⑤責任あるAIとAIガバナンスの推進

民主主義の価値に基づく、信頼できるAIという共通ビジョンを推進するため、国や地域により異なるAIガバナンスの相互運用性を促進することの重要性を認識し、「AIガバナンスのグローバルな相互運用性を促進等するためのアクションプラン」に合意。生成AIについて、早急に議論の場を持つことに合意3

⑥デジタル市場における競争政策

デジタル競争分野での既存の法律や新たな法制度の立案や執行において各国で共通して抱える課題を共有していくこと、デジタル競争サミットを今秋開催することに合意。

図表2 G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の模様

■(参考)G7広島サミットでの議論(首脳コミュニケの主なポイント)

2023年5月20日に発出された「G7広島首脳コミュニケ」においては、G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の結果も踏まえ、デジタル分野に関し、AIやメタバース等の新興技術に関するグローバルガバナンスの重要性、DFFT具体化の取組の支持、安全で強靱なデジタルインフラの構築及びデジタル格差への対処の必要性等に合意した。首脳コミュニケにおける主な内容は以下のとおり。

AI関連:生成AIのガバナンス、知的財産権保護、透明性促進、偽情報への対策及びこれらの技術の責 任ある活用といったテーマを含む形で、関係閣僚に対して、生成AIに関する議論のために、包摂的な方法で、OECDやGPAIと協力しつつ、G7作業部会を通じた、「広島AIプロセス」を立ち上げるよう指示し、年内に作業部会で議論する。

メタバース関連:全ての産業及び社会部門において革新的な機会を提供し、持続可能性を促進しうるメタバースなどの没入型技術及び仮想空間の潜在性を認識し、OECDの支援を受けて、相互運用性、ポータビリティ及び標準を含め、この分野での共同のアプローチを検討するよう関係閣僚に指示。

DFFT具体化の取組:DFFT具体化に向けたパートナーシップのためのアレンジメント(IAP:Institutional Arrangement for Partnership)の設立を承認。

安全で強靱なデジタルインフラの構築及びデジタル格差への対処の必要性:海底ケーブルの安全なルートの延長などの手段により、ネットワークの強靱性を支援し強化するために、G7や同志国との協力を深化することにコミットすることを確認するとともに、G7日本議長国下で、Open RANの初期の導入が進んでいることに鑑み、オープンな構成及びセキュリティに関連する側面と機会について意見交換を実施。デジタル格差の解消の必要性を認識し、公平性、普遍性及び廉価性の原則の下、デジタル・アクセスを拡大するために他の国々を支援するというG7のコミットメントを再確認。



1 この他、ICTサプライチェーンにおけるサプライヤーの多様化に向けた取組を歓迎し、オープンで相互運用可能なアプローチに向けた市場動向について引き続き議論したほか、地上系/非地上系ネットワーク、海底ケーブル等で構成される複層的なネットワークの開発、展開、維持が重要であり、同志国との協力を深化すること等について合意。

2 この他、グローバルで分断のないインターネットを推進し、分断に向けたいかなる意図や行動に反すること、権威主義国によるインターネットシャットダウンやネットワーク制限等の活動に共同で対抗することについてG7として確認したほか、IGF2023京都会合の成功に向け、様々なステークホルダーと連携し、G7として協力して取り組む点について一致。また、既存の偽情報対策をプラクティス集として取りまとめ、IGF2023京都会合において公表することで一致。

3 生成AI技術による機会と課題を早急に把握し、技術の発展に際して、安全性と信頼性を促進する必要性を認識し、生成AIの急速な伸張の中で、OECDやGPAIなどの国際機関等も活用したAIガバナンス、知的財産権保護、透明性確保、偽情報への対策とともに、責任ある形での生成AIを活用する可能性についてのG7における議論の場を設置することについて一致。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る